キリム・ギャッベのデザイン

 キリム、ギャッベにあるデザインは、自然の恩恵を受けている遊牧民の歴史から、身近にある自然や動物などがデザインの元になっています。写実的に作られているものもありますが、イスラム教のタブーや直線的な織りに合わせる形で幾何学的に抽象化された文様が大半です。
 それぞれの形には様々な意味が隠されており、織り手である女性の恋愛、結婚、出産から家族の安泰、幸福への願いなど数多くあります。
 いくつかの文様と、それらの形に隠された、背景的な意味を紹介します。

男と女(人型)

 人間賛歌を表した文様。男、女、子供、それぞれの形があり、特に女性を表す文様の場合、多産や母性を意味する。

手・櫛

手は邪悪なものから、身を守る意味がある。櫛は生命の誕生と結婚を意味する。

目(イーヴィルアイ)

 魔除けを意味する。三角形や菱形に形の変化したものもある。三角形や菱形は外部的な危険を弱めると信じられている。

豊穣(ベレケット)

 麦などの穀類の豊穣を願うモチーフ。ケシ、メロン、イチジク、ブドウなどの果実のモチーフもある。

 アジアから伝わったモチーフで、男女の調和、和合などの意味を表している。

 6点の輝きを持つ星型が基本形。ソロモン王の印としても知られる。8点の星もある。幸せ、豊穣、母親の子宮などを象徴。

ドラゴン

 獅子の足、蛇の尾、翼を持ち、火を吐く想像上の生き物。暴力、悪を象徴するが、宝、女性、泉を守る守護神ともされる。

 様々な解釈があるモチーフ。生活の安定、幸福の願い、楽しみと愛と言った意味合いから、幸せと不幸の巡り合わせという意味合いも。

羊の角

 遊牧民にとって、羊はキリムの原糸であり、食料であり、財産である。その角のモチーフは繁栄や武勇を表している。

狼の口

 狼に羊が襲われないようにという願いを込めたモチーフ。邪悪から身を守る意味合いがある。

メヘラーブ

 イスラムの寺院にあるアーチ状のくぼみのこと。聖地のメッカの方角を示す壁龕の模様。祈祷用のラグには欠かせないモチーフ。

ボテ

 イランの代表的なモチーフ。ペイズリーとも呼ばれる。松笠、柘榴や梨の果物を表した形や、ゾロアスター教の聖火という説もある。

 水の大切さをテーマにしたモチーフ。水が常に身近にあるようにという願いが込められている。

フック

 魔除けのモチーフ。鍵をかけ、外の邪悪なものを中に入れないという意味合いがある。

 遊牧民にとって、花の咲く園は楽園、エデンである。楽園に例えたバラ、カーネーション、チューリップなどがモチーフとして使われる。

生命の樹

 男性の成功、不死を願った、モチーフ。生命の樹を象徴する、ザクロやオーク、糸杉、ナツメヤシなどがその象徴。

 幸せや豊穣、多幸、財産を増やすといった意味がある。人類の発生時に遡るモチーフでもある。

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