キリム・ギャッベの染色

染色作業は、「この色が無ければこのデザインもない」と言われる程、極めて重要です。染色の技法は、責任者が所有し、厳重に保管され、世代から世代へと受け継ぐ門外不出の家宝の様なものなのです。色に色を、調合に調合を重ね、幅広い色彩を生んで来ました。

使われる天然染料の材料は、植物の根・花・葉・果実・樹皮、鉱物、動物等です。人工染料に比べ天然染料は、均一に着色するのに優れ、変色しません。

キリム 染料のもとになる植物の採取
(染料のもとになる植物の採取)

天然染料の基礎原料

ベニバナ
(ペルシャ名:ゴルランギ)

トゲが多く、光沢があり、花がサフラン色から赤色に変わる。 
ペルシャでは、主にシルクの繊維を赤味がかったゴールドに染色する際に使う。
ベニバナ

 
あかね
(ペルシャ名:ローナス)
 
様々な種類がある。砂地で成長し、根から砂糖を作ることが出来る。
秋の終り頃に刈り取り、一般的には天日干し又はボイラーで乾燥させて使うが、日陰干しにすると、更に品質が上がる。加工工程で、乳酸を含むサワーミルクを使うことで、光沢のある赤色が作れる。 
あかね:ローナス

 
コチ二―ル
(ペルシャ名:ゲルメスダーネ)

日本名は、エンジムシ。様々な種類が生息するが、オークやサボテンの木々に隠れる環境があると、早く増殖する。雌からのみ自然な赤色が作れる。
コチニール:ゲルメスダーネ

 
サフラン
(ペルシャ名:ザフラン)

球根のような形の植物で、食物の香り・質を改善するのに、使われることでもお馴染み。鮮やかな黄色が出来る。
サフラン:ザフラン

 
ロッグウッド
(ペルシャ名:バガーン)
トゲのある木で、樹皮または樹液から自然な黒と灰色が摂れる。 
他の物質と調合することで、より自然に近い黒・明るい赤紫、灰色になる。
ロッグウッド:バガーン

 
インディゴ/藍
(ペルシャ名:ニル)

元は、インドで発見された植物。世界で採取され、長年染料に使われてきた歴史があり、日本でも親しまれている。葉を裂くと緑の液体が滲み出て、空気に触れた途端に青く変わる。早くそして強い着色力で、染料として最適と言える。
インディゴ 藍:ニル

 
ウィード
(ペルシャ名:エスパラク)

絶えず光をあてていることで、数年をかけて黄色に変化する。
ウィード:エスパラク

 
ターメリック
(ペルシャ名:ザルチュべ)

イランでは、ほとんど調理に使う植物。茶・濃い灰色・緑・黄緑・橙色等が出来る。
ターメリック:ザルチュベ

 
タンニンを含む植物  
ざくろ
(ペルシャ名:アナール)

原産地はペルシャで、今では世界中で見られる植物。果実の皮から灰・暗色が出来るが、タンニンを含む他の植物と調合すると、更に数種の色が作れる。
    
ざくろ:アナール

 
オーク
(ペルシャ名:バルト)

幹・枝・樹皮から豊富なタンニンが摂れ、染料だけでなく医療用・製皮用としても使われる。樹皮に、最もタンニンが多く、茶・黄味のある橙色が出来る。
オーク:バルト

 
ウォールナット
(ペルシャ名:ゲルドゥ)

温暖な気候がある地域で見られ、35〜40%のタンニンを含んでいる。他のタンニンを含む植物と調合し、茶・暗色が出来る。
ウォールナット:ゲルドゥ

 
ミラバラン
(ペルシャ名:ハリへ)

プラムに似ており、熟する前に乾燥させる。タンニンを45%含んでいる為、染色のみならず医療用にも使われる。黄色が出来るものと、他の媒体と使い黒・緑色が出来る種類がある。
ミラバラン:ハリヘ

 
その他の植物
一般的に、桑・葡萄・ヘナ・プラタナの葉は、天然染料開発のために使われてきた。
○白桑の木−黄色、黒桑とその果実−赤紫色。他の媒染剤を使うと、赤や灰色。
○葡萄の葉とメッキした鉄−オリーブグリーン。アルカリ性の塩を使うと橙色。
○プラタナの葉−黄緑、深緑色。
○ウール−とうもろこしのワラと煮ると明るいベージュ。玉ネギの皮で煮ると桃色。
へナの葉と煮るとジャスパーグリーン。
この他にも、遊牧民などが染色に使う物としては、
○ケシの実・バラの根−赤色
○イチジク・レモンの皮・ピスタチオの木・りんご・柳の木−黄色
○ナスの皮−青色
○柳の葉・プラムの樹皮・ムギの葉−橙色
○オリーブの葉−緑色
○チャイ(ペルシャの茶)の葉・タバコ・鉄・泥−黒、茶色。
○西洋刺草−金色、明るい茶色。

媒染剤
インディゴ(藍)を除く基礎原料だけでは理想の色に染まらないことが多く、現在では、媒染剤として塩・鉄・石灰・酢などを使う。古くからは、木の根・葉・果汁などがある。

キリム 染色され綺麗に揃った糸

(染色され、綺麗に揃った糸)

キリム 天日干しによる染料素材
(天日干しによる染色素材)
キリム 美しく染料された糸
(美しく染色された糸)

有名産地・部族

 ペルシャキリムは産地だけでなく、部族によって違いが見分けられるため、多くのキリムが部族・遊牧民の名で呼ばれています。長い歴史の中で住む場所が違っても、同じ部族であれば、多くの共通点があります。これはペルシャキリムが他国のキリムと比べて商業化されていないため、各部族や産地の特徴が失われずに織られているからということでしょう。
 産地・部族について、詳しくはこちら

織り方

特徴としては、図面がないことです。キリムを織る前に、予めデザイン・色合いを決めておかなければいけません。また、遊牧による生活様式のため、サイズは携帯できる大きさで、染料も僅かでした。基本の平織りから始まり長い歴史の中で様々な技術が生まれ、徐々に織りの細かいより複雑な模様のキリムが生まれ、世界中のコレクターの心を惹きつけてやまないアイテムとなり得たのです。
キリムの織り方について詳しくはこちら

染色

染色作業は、「この色が無ければこのデザインもない」と言われる程、極めて重要です。染色の技法は、責任者が所有し、厳重に保管され、世代から世代へと受け継ぐ門外不出の家宝の様なものなのです。色に色を、調合に調合を重ね、幅広い色彩を生んで来ました。
使われる天然染料の材料は、植物の根・花・葉・果実・樹皮、鉱物、動物等です。人工染料に比べ天然染料は、均一に着色するのに優れ、変色しません。
天然染料のについて詳しくはこちら。 

デザイン

キリムにあるデザインは、自然の恩恵を受けている遊牧民の歴史から、身近にある自然や動物などがデザインの元になっています。写実的に作られているものもありますが、幾何学的に抽象化された文様が大半です。
それぞれ隠された意味があり、織り手である女性の恋愛、結婚、出産から家族の安泰、幸福への願いなど数多くあります。
その形から見て、隠された意味を探ってみましょう。詳しくはこちら

当社の名品の一部

当社の名品をご紹介しています。
詳しくはこちら

メンテナンス

ペルシャ絨毯・キリムは、靴を履いたままで、家の中ですごす欧米式生活様式にも耐えられる作りですが、玄関で履物を脱いで生活するような日本の生活様式ですと、想像するほど、痛んだり汚れたりはしないものです。ただ、日頃からのお手入れによって、何代にも受け継ぐことができるほど長持ちします。ペルシャ絨毯・キリムのクリーニング・メンテナンスについて、詳しくはこちら